高齢者は「口腔の乾燥」で誤嚥リスクが上がる?在宅でできる予防ケア
こんにちは。六本木ルアナ歯科 訪問診療部の宮本幸奈です。
季節が変わり、湿度が下がってくると、訪問の現場で増えてくるのが
「口の乾燥(ドライマウス)」 に関するご相談です。
高齢者にとって口腔乾燥はただの不快感ではなく、
誤嚥・むせ・栄養低下・義歯トラブル に直結する大切なポイントです。
今日は、訪問歯科でよく見かける“口の乾燥”について、
ご家族にもわかりやすくお話ししたいと思います。

■ なぜ、高齢になると口が乾きやすくなるの?
高齢期の乾燥には、複数の理由が重なります。
- 加齢による唾液分泌の低下
- 多剤服用(降圧剤・精神科薬など)による副作用
- 脱水(喉の渇きに気づきにくくなる)
- 口呼吸(鼻づまりや姿勢)
- 室内の乾燥
つまり、乾燥は“年齢のせい”というより、生活・体調・薬の影響がすべて重なった状態なんです。
■ 乾燥は「飲み込み(嚥下)」にも影響します
唾液は、口の中を潤すだけではありません。
食べ物をひとまとめにして飲み込む「食塊形成」を助け、
気管に入りそうなものを自然に流す“潤滑剤”の役割もあります。
乾燥すると…
- 食べ物がくっついて飲み込みが遅れる
- 一口目でむせやすくなる
- 食後に声がガラガラする
- 微量の誤嚥が増える(不顕性誤嚥)
「むせ」が多くなるのは、実は乾燥のサインであることも多いです。

■ こんな“乾燥サイン”に気づいたら要注意
訪問の現場で、乾燥している方に共通して見られるサインがあります。
- 舌がひび割れている
- 唇が乾燥してめくれる
- 口を開けたまま眠っている
- 食べ物が口の中に長く残る
- 義歯が外れやすい
- 食後にゴロゴロした声
ひとつでも当てはまる場合、
「飲み込みの機能が落ちているサイン」でもあるかもしれません。
■ 口が乾くと、義歯(入れ歯)にも影響が
唾液が減ると、義歯の“吸着”が弱くなり、
- 外れやすい
- 歯ぐきが痛い
- 食べ物が義歯の下に入り込む
といったトラブルも起きやすくなります。
その状態が続くと、
炎症・潰瘍・噛めない → 栄養低下 にもつながるため、
乾燥は義歯のフィットにも関係する大切な視点です。
■ ご家族が今日からできる「乾燥ケア」
乾燥は、少しの工夫で軽減できます。
- 室内の加湿(40〜60%を目安に)
- 唾液腺マッサージ
- 水分摂取を“こまめに少量”
- 食事前の嚥下準備運動(首・舌の簡単な体操)
- 保湿ジェル・保湿スプレーの使用
- 口呼吸を防ぐための枕の高さ調整
特別なものは必要ありません。
“ちょっとした積み重ね”が誤嚥予防にもつながります。

■ ルアナ歯科では「粘膜 × 嚥下 × 義歯」をまとめて診ています
乾燥は、単独で起きることは少なく、
嚥下の低下・義歯の不調・姿勢の乱れとセットで現れることがほとんどです。
そのため、ルアナ歯科の訪問診療では
- VE(嚥下内視鏡)による飲み込みの評価
- 飲み込みやすい姿勢の提案
- 看護師・ケアマネ・リハ職と連携した食支援
を行い、「これからもお口を使い続けるためのケア」を重視しています。
■ まとめ
口が乾くことは、ただの不快感ではありません。
誤嚥・むせ・食べにくさ・義歯トラブルの背景にある
“重大なサイン”であることも多いです。
季節が冬へ向かう今、
少し気にかけるだけで、
誤嚥性肺炎のリスクをぐっと減らせることがあります。
乾燥が気になる方は、
お気軽にご相談ください。
ルアナ歯科は、在宅でも「整う口腔ケア」を大切にしています。


